底付け師と靴底交換2017.12.01

リウェルト|靴の雰囲気を作るコバのウェルト交換

オールソール交換ではさまざまな工程を経て5~8種類の部材を交換し、釘と糸と糊で部材を留めます。

今回は部材の一つ、「ウェルト」についてです。

ウェルト交換(リウェルト)

ウェルトは、アッパーを守る役割と、靴の雰囲気を作り出すことに一役かっている大切なパーツです。

また、靴の製法によっては、オールソールの時にかかる靴への負荷からウェルトがアッパーと中底を守ってくれます。

そんな重要な役割を担ってるウェルトの交換は、靴の製法によって使用するウェルトの種類とウェルト交換(リウェルト)の方法が異なります。

ウェルトとは?

ウェルトとは靴の側面にあるコバ上部の革です。このコバは言うなれば車のバンパーです。外部からの接触に対して靴の側面に張り出してるコバが最初にぶつかることでアッパーを接触から守ってくれてます。

 

靴のコバ部分のウェルト

※ウェルトの素材は革だけでなくナンポウなどいくつか異なる素材もあります。

 

そしてもう一つ。コバは靴の雰囲気を作るにあたってとても重要な箇所になります。このコバの厚みや張り出し方、デザインによってその靴の雰囲気が左右されます。

 

コバの張り出し小さいファラガモの靴

コバが薄く、張り出しが小さいとスマートな雰囲気の靴に仕上がる|フェラガモ

コバの張り出しが大きいオールデンの靴

コバが厚く、張り出しが大きいと重厚な雰囲気の靴に仕上がる|オールデン

 

このコバの作り方は靴の製法や仕様によっても変わってきますが、コバの厚みはソールとウェルトの厚みを足した厚さになります。

故に、コバの一部であるウェルトを交換すると、靴そのものの雰囲気も変わってくるため、ウェルト交換(リウェルト)をする際には靴の雰囲気にあったウェルトを選ぶことがとても大切になります。

ウェルト交換(リウェルト)の時期

ウェルト交換は靴の構造上、単体でできる修理ではありません。

革靴の構造は大きく分けて、①アッパー、②中底、③ソール、の3パーツから出来てます。

 

靴の図|ウェルト

靴を横側面からみた図です。

 

上の図の様に、ウェルトはアッパー及び中底とアウトソールの間に位置しています。そのため、ウェルト交換(リウェルト)はオールソールをするときにしかできません。

逆に、オールソールをするときに、ウェルトに損傷などがなければ、ウェルト交換(リウェルト)をする必要もありません。

故に、オールソールのときにはウェルト交換をするオールソールと、ウェルト交換をしないオールソールの2パターンに分かれます。

ウェルト交換をするオールソール

靴の製法によってウェルトの付け方が異なります。一つは、ウェルトを糊で付ける製法、もう一つは、ウェルトを糸で縫い付ける製法です。

この製法の違いによってウェルト交換の方法や、使用するウェルトの種類も変わってきます。

糊で付けるウェルト交換(リウェルト)

ウェルトを糊で付ける製法の代表格として上げられるのがマッケイ製法セメンテッド製法です。

この製法では、ウェルトが縫われないため、使用されてるウェルトの多くが革でなくナンポウなどの資材になります。

ナンポウとは、皮革クズや紙の繊維を混ぜ固めたもので、本革のウェルトと比較して、価格が安いなどのメリットがある反面、耐久性に劣り割れやすいなどのデメリットもあります。

 

ナンポウのウェルトが割れた状態

劣化によりナンポウのウェルトが割れた状態

 

当店では、ウェルトの素材が本革以外の場合、ウェルトの損傷などにかかわらずマッケイ専用の革ウェルトに交換させていただいてます。

これは、先に説明させていただいたように、ウェルト交換(リウェルト)は、オールソールをする時にしか出来ないからです。

靴にもお財布にも負担の大きいオールソールはそう何度もやるものではなく、また、何度もできる修理ではありません。故に、次にオールソールが必要になるまでにウェルトが割れたりしたら元も子もありません。

なお、本革のウェルトは耐久面だけでなく、経年変化による革独特の味わいも楽しんでいただけるかと思います。

縫い付けるウェルト交換(リウェルト)

ウェルトを糸で縫い付ける製法の代表格として上げられるのがグッドイヤーウェルテッド製法ハンドソーンウェルテッド製法です。

この製法ではウェルトが縫われるため、使用されるウェルトの多くは本革になります。

そして、この製法のウェルト交換(リウェルト)は、手縫いでなければできない修理で、糸も特殊な糸(チャン糸)を使って縫い付けます。

 

ウエット交換(リウェルト)のすくい縫い

写真はグッドイヤーウェルテッド製法です。リブテープがないとハンドソーンウェルテッド製法になります。

 

なお、ウェルトの縫い方については「チャン糸」のページでご紹介させていただいてますのでご興味いただける方はご覧ください。

チャン糸|ウェルト交換(リウェルト)で使う糸と手縫いの修理

ウェルト交換しないオールソール

先に説明させていただいたように、オールソールの際にウェルトに損傷などがなければウェルト交換(リウェルト)をする必要はありません。

実は、ここでウェルトの隠れた役割が果たされます。その役割とは、オールソールの時にかかる負荷からアッパーと中底を守る役割です。

但しこれは、ウェルトを縫いつける製法で作られてる靴のみの話です。ポイントは、アウトソールをどこに縫い付けるか?になります。

ウェルトの隠れた役割

一例として、ウェルトを糊で付けるマッケイ製法は、アウトソールをアッパーに縫い付けます。

一方、ウェルトを縫い付ける製法で作られてる靴は、アウトソールをウェルトに縫い付けて作られてます。

これにより、アウトソールを付けるときにアッパーと中底を縫い直す必要がなく、アッパーと中底への負荷が軽減されます。

 

ウェルト交換(リウェルト)|ウェルテッド製法

※グッドイヤーウェルテッド製法ではウェルトをアッパーとリブテープに縫い付けます。

 

上の図のように、この製法ではウェルト交換(リウェルト)をしなければ、ウェルトより下にあるアウトソールのみを剥がして、新しいアウトソールをウェルトに縫い付けるだけでオールソールができます。

故に、アッパーと中底を縫い直す必要がなく、アッパーと中底への負荷が軽減されるのです。

 

ウェルト交換しないオールソール

アウトソールを剥がした状態の写真です。※グッドイヤーウェルテッド製法のシングル仕様

 

オールソールは靴にとても負荷がかかる修理です。オールソールができる回数が限られてるのも、このことが一番の理由になります。

中でも一番負荷がかかるのがアッパーです。そのため、アッパーが傷んでる状態の靴は負荷に耐えられないのでオールソールはできません。

その点、アウトソールをウェルトに縫い付けるこの製法は、アッパーへの負荷が軽減されるため、その他の製法よりもオールソールをできる回数が多くできる製法と言えます。

ウェルトのおかげで靴が長く履けます。

革靴は基本的にアッパーと中底が傷まなければ、靴底の部材を交換しながらずっと履き続けることができます。

普段はコバの一部として靴の雰囲気を作ってくれてるウェルトですが、実は、外敵(接触)からアッパーを守り、そして、オールソールの時には自らが縫われることで、アッパーと中底を守ってくれてます。

ウェルト自らがズタズタになることで、靴本体の寿命を延ばし、末永くその靴を履けるようにしてくれてるのです。

まさにウェルトさまさまですね。

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