101年前の軍靴の修理オールソールと中底交換
100年以上も前に日本で作られた騎馬隊の軍靴を修理させていただきました。
なお、正式には五年式長靴(ごねんしきちょうか)と呼ぶそうです。
今回の軍靴の修理は、アッパーの修理とオールソールに加え滅多にしない中底交換もしたので中底交換について少し触れたいと思います。
軍靴の修理前
100年以上も前の軍靴。流石に見た目だけでも相当傷んでおり、実際のところは分解してみないと修理可能かは分からない状態でした。
傷みの激しい靴の場合、オールソールをお断りされてしまうケースは珍しくありません。
これは、一般的な修理と比べてオールソールは靴に与える負荷が大きいからです。
もし、オールソールの際にアッパーと中底が負荷に耐えられないと、分解した状態から先の修理ができなくなってしまいます。
故に、今回の軍靴のように傷みの激しい靴の場合は、革(アッパーと中底)が修理に耐えられるかどうかが一番心配なところです。
実際のところ、今回の軍靴は中底が大分傷んでたので、中底がオールソールの負荷に耐えられないだろうと判断していました。
それでは、この軍靴を分解して修理していきましょう!!
軍靴の修理
今回の軍靴のように傷みが激しい靴の場合、分解するときにこれ以上ダメージを与えてしまうと修理ができなくなってしまいます。
そのため、実は修理作業よりも靴を分解していく作業の方がより気を使います。
アウトソールを剥がす
まずは、丁寧にアウトソールを剥がしていきます。
100年以上も前に日本で作られた騎馬隊の軍靴。一体どんな製造方法だったのでしょうか?
アウトソールを剥がすと中底が見えてきます。この縫いはカガリ縫いと言って現代の既成靴ではもう滅多に見ない縫い方ですね。
現代では鉄釘(タックス)でアッパーと中底を留めますが、当時は木の釘と糸で踵部分のアッパーと中底を留めてました。
なお、このカガリ縫い、現代でもビスポークシューズで極たまに見ることができます。
靴職人の中には自然素材にこだわって鉄釘(タックス)を使わずにペースを使ってる靴職人さんもいらっしゃいます。
中底を剥がす
アウトソールを剥がし終えたら次に中底を剥がします。
通常、中底を剥がすことはありませんが、今回は中底の傷みも激しく修理に耐えれるか微妙なところでしたので新しい中底に交換します。
中底を剥がすとすっぽりですw
こちらが剥がした中底です。
中底を作る
無事に靴の分解が完了したら次に交換する中底を新しく作ります。
中底は一枚の革から靴の形に合わせて一から作らなければいけません。この時に必要になるのがラストと呼ばれる木型です。
木型は靴を作るときに使うものなので、靴の修理屋さんで目にする機会はあまりないかと思いますが、靴を作るときにはこの木型(ラスト)に革を当てて靴を作っていきます。
中底を作る作業は修理と言うより、ビスポークシューズを作る作業と一緒ですね。
ただ、ビスポークシューズと違うのは、修理の場合、既成靴(修理する靴)にぴったり合う木型(ラスト)がないので、目検で微調整を繰り返しぴったり合う中底に仕上げなければいけません。
こちらが新しく作った中底になります。
新しい中底を作ったらあとは、中底をアッパーに付けて、オールソールを施せば靴底の修理は完了です。
軍靴の修理後
踵部分の裂けてた箇所に革当てをしてからアッパー(革)のメンテナンスを行って全体の修理完了です。
靴は大きく分けてアッパー、中底、靴底の三層から出来ています。
このうち靴底は取り換えることが出来ますが、通常、アッパーと中底を取り換えることはできません。
また、革靴は持主さまが使い込むことで革が持主さまの足に馴染み理想の履き心地へと近づいていきます。
その馴染む革とは、まさに足に直接触れるアッパーと中底です。
なので、せっかく足に馴染んで、形成された中底を交換をすることは滅多にしませんし、お勧めもしてません。
今回の中底交換は例外と言うか最終手段の修理となります。