底付師のオールソール工房

昭和三十六年
初代店主 佐藤正利
平成二十三年
二代目店主 村上塁

ダイナイトソールとビブラム#2055の厚みの違いを比較

前回のトリッカーズカントリーのオールソールで、ビブラム社の#2055ソールハルボロラバー社のダイナイトソールの厚み(高さ)の違いについて少し触れたところ、

もっと詳しくとのお声をいただいたので、この2つの厚みの違いについてもう少し、詳しく書いてみたいと思います。

ダイナイトソールビブラム#2055ソールはデザインこそ似ていますが、ソールの厚みが違うので靴の印象を作る「コバ」部の厚みが変わってきます。

一般的に、コバ部の厚みが厚いほどその靴の印象は重厚感を増し、薄ければ薄いほどスマートな靴の印象に仕上がります。故に、厚みの違う2つのソールの使い分けを間違えると靴の雰囲気を崩しかねません。

ダイナイトソールとビブラム #2055ソールの厚みの違い

ビブラム#2055とダイナイトのソール

(左)ビブラム#2055|(右)ダイナイトソール

 

写真の通り上から見ると、ビブラム社の「#2055ソール」とハルボロラバー社の「ダイナイトソール」は、デザインがとても似ております。しかし、横から見てみると、その厚みの違いが分かります。

ダイナイトソールの厚み

まず、原型となる「ダイナイトソール」の厚みは丸状の凸が約2㎜出ており、それ以外のフラット部においては前足部が約5㎜です。

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ビブラム #2055ソールの厚み

一方、「ビブラム #2055ソール」の厚みは、丸状の凸が約0.5㎜出ており、それ以外のフラット部は約6.5㎜です。

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数値からも分かるように似て非なるものです。

この話をさせて頂きますと、たった数㎜の違いなら同じだろう、と思うかもしれませんが靴において数㎜の違いはとても大きいもので特に素材の厚みにおける数㎜の違いは、その靴の印象までをも変えます。

そして、靴の印象を左右するソールの箇所とは「コバ」であり、コバ厚がその靴の印象を変えることに一役買っています。

例えば、前回のトリッカーズ カントリーの革底をビブラム #2055ソールで仕上げたとするとコバがとても厚くなり、オリジナルに比べて重々しい感じの靴になってしまいます。

既成靴においても、フラット部が薄く、コバも薄く仕上がる「ダイナイトソール」を使用する場合は、ダブルソール仕様 (ウェルト+ミッドソール+ダイナイトソール) にしていることが多く、

一方、フラット部が厚く、コバも厚く仕上がる「ビブラム #2055ソール」を使用する場合はシングルソール仕様 (ウェルト+#2055ソール) にしていることが多いです。

ソールの違いを見たところで、次にリフトの厚みについて見てみたいと思います。

ダイナイトとビブラム#2055リフトの厚みの違い

ビブラム#2055とダイナイトのリフト

(左)ビブラム#2055のリフト|(右)ダイナイトソールのリフト

ソール同様、リフトも、デザインがとても似ています。しかし、横から見てみると、その厚みの違いが分かります。

ダイナイトのリフト

ダイナイトのリフトは、凸が2㎜出ていて、フラット部が9.5㎜厚です。合計11.5mm。

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ビブラム#2055のリフト

ビブラム#2055のリフトは、凸が0.5㎜出ていて、フラット部は8㎜厚です。合計8.5㎜。

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ソールと同様に
凸部とフラット部を足した全体的なリフトの厚みには差があり、ダイナイトリフト側(11.5㎜) がビブラム#2055リフト(8.5㎜) に比べて「3㎜」高くなります。

数値から分かるように、リフトにおいて互換性は無く、リフト交換の場合は、元々どちらのブランドが使われていたかで、交換時に使用するリフトは自然と決まります。

どうしてもブランド変更したいお客様に対しては、踵の革積上げにさらに3㎜の革を足すか、もしくは3㎜取るかした後に、「傾斜取り」という木型を入れた靴の接地ポイントを見直す作業を施します。そして接地がズレているようであればまた一から繰り返し調整していくことで、厚みを変えたリフトを接着しても、履き心地を保ったリフト交換となります。