底付師のオールソール工房

昭和三十六年
初代店主 佐藤正利
平成二十三年
二代目店主 村上塁

ステファノ ベーメルのビスポークのオールソール①

ステファノ ベーメルのビスポークのオールソールです。
今回は内容が大分重い修理ですので、構造や仕様に関わる専門用語が多少含まれます。

靴の仕様としては十分(出し縫いが全て手縫い)、チャネル仕上げ(出し縫いを底面から見えないように伏せ隠す技法)、ベベルドウエスト(絞った土踏まず部分の出し縫いを見えないようにする技法)といったところです。さすがフィレンツェを代表する氏のビスポークに相応しく、凝った作りになっています。

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靴底を取ってみると中には木製シャンクが見受けられます(下写真)。
シャンクとは、体重や歩行時の負荷によりヒールのアゴ部(靴底から見た時にソールに対して垂直に立ち上がるヒールの一部を指す言葉)で本底が折れ曲がるのを防ぐため土踏まずから踵に跨いで入る板状のものです。
素材は鉄や木・圧縮紙・プラスチック等があり、大きさや形状はブランドにより様々なものが入っています。またアイリッシュセッター(レッドウイングを代表する靴)のようにウェッジ型のソールが付いている場合、靴底自体がシャンクの役割を果たすために入れていないものもあります。

各ブランドがデザインや革、ラスト(靴の形を決定するもの)を変えることによりオリジナリティを出すのは周知の事実ですが、実は外観からは見えない箇所の材質や形状にもこだわり違いを持たせ、次いでは履き心地への違いへと昇華させる努力はあまり知られていないかもしれません。

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