底付師のオールソール工房

昭和三十六年
初代店主 佐藤正利
平成二十三年
二代目店主 村上塁

マグナーニ (オパンケ製法) のオールソール③

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三つ目は技術面になりますが
マグナーニ(オパンケ仕様)の外踏まずにあたる捲り部を縫うための
「糸」が上げられるでしょう。

 

あまり知られておりませんがこの糸、職人自身が作ります。

 

‥もちろん時間が惜しいのでカイコガから育てる事は致しませんが
麻糸や化繊のロールを購入して
それを加工したり
単糸(たんし)と呼ばれる細い糸を自身で何本か縒り上げたりと
その靴で元々使用されていた糸の太さと色、雰囲気を壊さないものを選び抜いて使用致します。

 

しかし、糸の種類に関係なく共通してする作業が松ヤニ
通称「チャン」を糸に塗り込むことです。

 

こればかりは外せません。

 

当店のように駅から離れたシャッター商店街で寂しく靴修理を営んでいますと
他店に出したけども一週間経たない内に再度ほつれてしまった等の御自身の苦い体験により
ハドソン靴店のHPを見つけていらっしゃるお客様が殆どになります。

 

そして
その様な靴を拝見しますと大抵
ホームセンターで購入してきた既存の化繊か
革小物用のロウ引き糸で縫われております。

 

平均体型の男性が平均歩数を歩くと靴には500t弱かかると言われており
それらの糸では、一箇所が何かの拍子に切れた場合
釣られて他ステッチも緩み取れてしまい、靴の機能が失われます。

 

チャン糸の場合
糸自体にベトベトした松ヤニが効いている上に、ロックを掛ける糸を交差させる縫い方をしていきますので
何かの拍子に一箇所切れたとしても他が緩むことが無くなる訳です。

 

他にもオパンケ製法の修理で難しい点をあげれば
木型を靴に入れなければ縫いづらい
作った糸の先端につける針を火で炙りながら曲げる
本底側の下穴をあけるための南京針を研いで刃を付ける等々、切りがなくなりますので
今回オパンケ製法についてはこれぐらいにて終わりにさせて頂き、続きはまた違った機会に致しましょう。

 

ご清覧ありがとうございました。

after
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