底付師のオールソール工房

昭和三十六年
初代店主 佐藤正利
平成二十三年
二代目店主 村上塁
ステファノ ベーメルのビスポークのオールソール

ステファノ ベーメルのビスポークのオールソール④

ステファノベーメルのビスポーク、オールソールの続きです。前回出し縫いについてお話しさせて頂きましたが、今回は「ベベルドウェスト」についてです。

ベベルドウェストとは、靴のウェスト(底面から見た土踏まず部)を極限まで細く絞り上げることにより色気を醸し出しエレガンスさを演出する意匠の一つです。

どちらが先か、近代ヨーロッパにおける女性がコルセット着用により
バストとヒップの豊かさを強調するため対比的にウェストを細く見せた事と似ていますね。

最近、既成靴においてウェストを単に細くしてベベルド風に見せている靴を良く目にしますが、本来のベベルドウェストとはウェルト(靴底の一層目)を本底(靴底の二層目)により巻き込んで隠しているものを指します。

よって、ウェストが絞られている事は勿論ですが、靴を真横から見た時ウェスト部のみが一層だと見間違う程に薄く見えるのです。

この技法は土踏まずの出し縫いを奥いった場所に掛ける必要性から
出し縫いの機械(ランデスやペテルセン等)ではニードル(正確にはオール)が入っていかず、現在手仕事でなければ表現し得ないのです。

それ故ベベルドウェストで仕上げられている靴は
それだけで手仕事に重きを置くビスポークの可能性が高くなるわけです。

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今回の靴に限って、ステファノ氏がベベルドウェストを採用したのは、ウィズ(足囲)の大きい足のためウェストとの間にメリハリをつけて御客様のお悩みであったウィズを逆手にとろうと思ったのではないでしょうか‥?

このように古い靴を解体するという一見何でもない作業から、先の靴職人の仕事を、今を生きる靴職人がどの様に受け取り己の仕事へ昇華させていくのか?私を通して少しでも皆様に知って頂けると嬉しいです。